あらすじ
「愛」はバグ(精神汚染)であり、論理と契約こそが絶対の秩序(システム)。
異世界に転生したアカリは、前世の記憶を持つがゆえに、このあまりに冷たい世界で心をすり減らしていた。
そんなある日、アカリは王宮の片隅にある塔で、「感情が豊かすぎる」という理由だけで幽閉されている王女リリアと出会う。
論理的に「不良品」とされ、誰からも愛されず、感情を失いかけていた少女。
「この世界に愛はなかった。だから、私がこの子を愛で育てましょう」
アカリはシステムの監視をかいくぐり、リリアに秘密の「愛」育てを始める。温かい食事、髪の手入れ、そして前世のおとぎ話。アカリの「愛」を受け、リリアは徐々に感情を取り戻していく。
リリアが初めて「嬉しい」と感じた時、枯れた鉢植えにありえない「青い花」が咲いた。それは、この世界の論理の外側にある「創成魔法」の奇跡だった。
だが、その奇跡はシステム(宰相)の監査ドローンを呼び寄せてしまう。
「バグの除去」のためリリアを攻撃しようとしたドローンに対し、リリアはアカリを守ろうと「怒り」を爆発させる。すると、リリアの感情(バグ)は、論理で構築された機械(システム)を物理的に破壊し、撃退してしまった。
アカリは戦慄し、王宮の禁忌アーカイブを調査する。
そして知る。この世界がかつて滅びかけた原因は、戦争や兵器ではなく、制御不能となった「愛の暴走(ラブ・オーバーフロー)」だったことを。
アカリが育てていた「愛」は、世界を再び滅ぼしかねない「厄災の種」そのものだったのだ。
その矢先、二人の秘密はアカリの上司であり、論理の体現者であるマキナに露見する。
マキナを「アカリを奪う敵」と誤認したリリアは、ついに暴走する。
「アカリは、わたしの!!」
アカリへの強すぎる「愛(独占欲)」が、攻撃的な創成魔法となってマキナに襲いかかる。
その姿を見たアカリは、忌まわしい前世の記憶――事故で娘(妹)を守れなかったトラウマ――を思い出す。
アカリは気づいてしまった。
自分はリリアを愛していたのではない。失った娘の「身代わり」として利用し、自分の心の穴を埋めていただけだったのだ。
自分が育てた歪んだ愛(モンスター)と、自分自身の歪んだ自己満足を前に、アカリは絶叫する。
「そんなのは『愛』じゃない!!」