あらすじ
海沿いの町・汐ヶ崎町で、やることもなく夏休みを過ごしていた高校生の凪は、ある朝、防波堤でひとり海を眺める少女・凛香と出会う。
都会から来ているという彼女は、まるで最初からそこにいたみたいに自然で、話すたびに心が動かされる、不思議な存在だった。
翌日も、そのまた翌日も、防波堤でふたりは、当たり前のように会う。
特別な事件は何も起きないのに、ふたりの会話や沈黙のあいだに、小さな温度が少しずつ灯っていく。
やがて迎える花火の夜。
浴衣姿の凛香とともに小さな夏祭りを歩き、
「また明日ね」
と約束を交わす。
──僕たちは、ほんの少しだけ、同じ夏にいた。
忘れられないのに、思い出のように淡く遠い、
そんな一度きりの夏の物語。