あらすじ
一通の手紙が、彼女の世界を五年止めた。
『魔王を討伐したら、婚約を解消したい』
勇者として旅立った婚約者ユリウスから届いたのは、
理由も前置きもない、たった一行の“下書き”のような破棄状。
王太子の婚約者であり、公爵令嬢でもあるリオナは、
その日から返事の「下書き」を書き続ける。
了承の返事、怒りの返事、泣き言だらけの返事──
どれも出せないまま、机の引き出しには紙切れだけが山のように積もっていった。
そして五年後。
魔王を討伐し、世界を救った勇者は、生きて王都へ戻ってくる。
「五年前のあの一行は、清書じゃなかった。臆病者の逃げの“下書き”だ」
謝罪とともにユリウスが望んだのは、「婚約解消」ではなく
「勇者と公爵令嬢ではなく、ユリウスとリオナとして、もう一度ゼロからの婚約」だった。
世界のために英雄であろうとした男と、
彼のために世界を嫌いになることすら選んだ公爵令嬢。
一通の手紙と、五年分の“下書き”をめぐって、
止まっていた二人の物語がようやく動き出す。
勇者と公爵令嬢という肩書きを脱ぎ捨てて、
「世界の物語」ではなく「私たちの物語」を書き直していく、
すれ違い再会ラブストーリー。