あらすじ

起:二人の健太 デザイナーの夢を追う健太は、生活に困窮しながら、五年前に夢のために彼女と別れたことを後悔し続けていた。花冷えの春の日、その彼女からの結婚報告の葉書を握りしめ、閉園間際の動物園にいた。獣と土の匂いが混じる中、彼は自分と瓜二つの男に出会う。男は、仕立ての良いコートを着こなし、健太が失った自信を持っていた。 承:二つの後悔と世界の歪み 男は、健太が「もしも」選ばなかった人生 ── 彼女を選び、夢を捨てた世界の健太だった。だが、男もまた、情熱を失ったことで彼女に去られ、同じ葉書を手にしていた。夢を選んだ健太も、彼女を選んだ健太も、どちらも「喪失」という結果を招いていたパラドクス)。二人の強い後悔が共鳴し、二枚の葉書が歪み、世界が混ざり始める。 転:観測者と交換の儀式 そこへ「観測者」を名乗る老飼育員が現れる。彼は、この動物園が「もしも」の世界が交わる「窓」であり、二人の強い後悔が膜を破ったと告げる。このままでは両世界が崩壊し、二人とも消滅するという。観測者に選択を迫られ、男は「交換」を提案する。「夢」が残る健太の世界と、「彼女」がいる(と男が信じている)自分の世界を交換しよう、と。健太は「彼女を取り戻す」という誘惑に勝ち、麒麟の檻の前で「交換の儀式」を行う。世界が悲鳴を上げ、健太は意識を失う。 結:二つの心臓と新しい朝 健太は「彼女を選んだ世界」の豪奢なマンションで目覚める。交換は成功した。しかし、元の世界の「夢」の記憶が混線し)、彼を苦しめる。この世界の彼女は、情熱を失った健太(男)に冷めていた。 そんな中、健太は元の世界で温めていた「夢」のアイデア(椅子のデザイン)が、この世界でライバルに奪われ商品化されていることを知る。激しい怒りの中、二つの記憶が「どちらも俺だ」と収束する。彼は、混線する記憶=二つの人生の経験を武器に、新たなデザイン(二つの世界が融合した「動物園」)を描き始める。その情熱に、彼女もかつての光を取り戻す。健太は「夢も彼女も選ぶ」と決意し、世界の歪みを引き受けたまま、不完全な男の新しい朝を迎える。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
エブリスタ
エブリスタ2025/11/14
  • 現在の作品【小説】錆びた缶コーヒーと白檀の香り