あらすじ
「地上に戻れるのは一人だけ。」
けれど──このシェルターに、そもそも地上への出口なんてなかった。
崩壊した都市の地下深く、老朽化したシェルターに13人だけが生き残っていた。
外の世界は高濃度の放射線に満ち、モニター越しの廃墟は常に白く煙っている。内部でも物資は底をつきつつあり、空調の唸る音と、腹の虫の音だけが響く日々。
ある朝、中央端末に通達が表示される。
「地上に戻れるのは1人だけ。
候補者を選出せよ。
選出されなかった人数に応じ、シェルターの維持条件は順次切り捨てられる。」
「誰も犠牲にしない」と誓う者。
「誰かが生き残るなら」と理屈をつける者。
幼い子どもを守ろうとする者。
過去の罪を抱え、せめて最後に誰かを救おうとする者。
“希望”の名の下に、話し合いはやがて疑心暗鬼と密かな暴力へと変わっていく。
食料の盗難、事故に見せかけた殺害、匿名投票による追放……。
彼らはその度ごとに「約束」を交わし、「今度こそ誰も殺さない」と確認し合うが、その言葉はすべて、中央端末の中に音声ログとして保存されていく。
主人公・朝霧凛は、他人を疑うたびに自分が壊れていく感覚に怯えながらも、「せめて誰か一人だけは、ちゃんと“選んで”送り出したい」とあがく。
しかし、飢えと恐怖が理性の限界を越えたとき、残された数人は気づいてしまう。
──このシェルターの出口は、最初からどこにもつながっていない。
──地上はすでに、誰一人として待っていない。
「地上に戻れるのは1人だけ」という通達は、生き延びるための希望などではなかった。
それは、人間がどこまで約束を破り、どこまで互いを傷つけるのかを記録するための、冷たい実験装置の文言にすぎない。
最後に端末に残るのは、殺し合ったことを悔いる声と、守れなかった約束のログだけ。
それでも凛は、最後の瞬間にたった一つの「約束」を書き換えようとする。
出口なき廃墟で、人間は何を選ぶのか──。