あらすじ
神保町の路地裏にある古書修復工房「月読堂」。
19歳の見習い修復師・月島栞は、ひとと目を合わせることすら難しい極端な内向型。
だが、彼女には誰にも言えない秘密があった。
──古書に触れた瞬間、その“記憶”が光や音、匂いとして溢れだす。
それは修復に役立つ反面、感情の奔流に呑まれれば心を持っていかれてしまう危険な共感覚。
栞はその力を「まともじゃない」と恐れ、厳格な師匠である祖父にも隠し続けていた。
ある日、亡き母の形見の絵本を「式でお守りにしたい」と願う花嫁が訪れる。
本は水濡れで原型を保たず、師匠は修復不能と判断する。
だが栞が本に触れた瞬間、
母娘が過ごした温かな日々の記憶が、淡い光の粒となって工房に舞い上がった。
「……私が、治したいんです」
初めて師匠に逆らい、栞は修復を引き受ける。
修復技術と共感覚、そして心の“欠け”を抱えた彼女自身の再生が重なり合う──
これは、一冊の本と一人の少女が“継がれていく”物語。