あらすじ
――春、桜舞う季節。
都立A高等学校――都内でも屈指の進学校に、
平凡な男子・竹島悠真《たけしま ゆうま》は奇跡的に合格した。
人並みの学力、人並みの夢。
努力と少しの運で手に入れた「新しい青春」に、
彼は小さな希望を抱いていた。
入学式の朝。
悠真は、壇上で新入生代表として挨拶をする少女――
宮城涼夏《みやぎ りょうか》を見て息を呑む。
透き通る声、凛とした姿勢。
桜の花びらの中に立つその姿は、まるで光そのものだった。
その瞬間、悠真の世界は音を失い、
ただひとりの少女だけが鮮やかに残った。
――それが、すべての始まりだった。
◇◆◇
涼夏は学年でも注目の的。
成績優秀で、容姿端麗。
誰もが彼女に一目置き、憧れ、そして――一部の者は「所有したい」と願った。
そんな彼女に、凡庸な存在である悠真が想いを寄せたことで、
クラスの空気はゆっくりと、だが確実に歪み始めていく。
最初は軽いからかいだった。
机の落書き、教科書の隠し、
無視、陰口。
だが、それは次第に“遊び”ではなくなっていった。
涼夏と一言交わしただけで、標的になる。
笑われ、押され、殴られ――そして、壊されていく日常。
それでも悠真は信じた。
「いつか分かってくれるはずだ」と。
「誰かが助けてくれるはずだ」と。
だが、その“はず”は決して訪れなかった。
放課後の屋上。
逃げ場のない空間で、悠真は袋叩きにされ、
血に染まった校章だけを残して――命を落とした。
そして、世界は静寂に包まれる。
――が、次の瞬間。
目を開けると、桜が舞っていた。
見覚えのある景色、初登校の朝。
カバンの重さ、春の匂い、聞き覚えのある声。
「おーいっ、竹島! まじで頑張ったんだな?」
――岡田蓮王。親友の声。
あの“入学式の日”に、時間が戻っていた。
すべてを失ったはずの俺が、
再び“最初”に戻っている。
なぜかは分からない。
けれど、ひとつだけはっきりしていることがある。
――俺を笑ったやつらを、許さない。
◇◆◇
優しい少年は、もういない。
時間を巻き戻すという“奇妙な力”を手にした竹島悠真は、
穏やかな日々の裏に潜む闇を、ひとりずつ暴いていく。
再び同じ時間を繰り返しながら、
彼は自分を傷つけた者たちの“人生”を壊し、
真実と涼夏の心に迫っていく。
だが――復讐の果てに待っていたのは、
想像を超える“もう一つの運命”だった。
それは、彼が初めて“時間を巻き戻した”理由に繋がる。
“生きる”とは、“繰り返す”とは、
そして“誰かを想う”とは――何なのか。
過去と現在、愛と復讐が交錯するタイムリープ・サスペンス。
――『桜が散る、そのたびに俺は死ぬ。』