あらすじ
親を亡くしたカフェー女給の標野琴絵は、店の一番人気のダンサー女給・胡蝶にいびられる日々を送っている。
どんなに無体な目に遭っても、弟のためにと耐えていたが、ある日、夜道で胡蝶の取り巻きの一人に襲われる。
「女に乱暴をするな」
危機一髪のところで通りがかった青年に助けられるが、彼はお礼を言う琴絵を冷たく突き放す。
「女がこんな夜中に一人歩きをしているから、あのような目に遭う」
確かに、このままでは、胡蝶にどんな目に遭わされるかわからない……!
身の危険を感じる琴絵の元に、後日、一人の紳士が現れる。
「私が君をここから助け出してあげよう。私の言うとおりにしたら、君は裕福な暮らしができる」
佐代原子爵に提案されたのは、行方不明になっている彼の娘の身代わりに、とある実業家の男に嫁ぐこと。
琴絵は差し出された手を掴んだが、結婚相手は女性に冷たく仕事しか頭にない男だった。
「絶対に、私が子爵令嬢の身代わりだと知られるわけにはいかない。弟のためにも――!」
悲愴な決意をする琴絵だが、夫の桐山憲斗は次第に彼女に心を開き始め……
西洋料理の香りただよう、大正時代のいつわり婚姻譚。
(エブリスタでも掲載しております)