あらすじ
動物園の飼育員である主人公は、霊長類館の片隅に一匹だけで飼われている日本猿「タロウ」の担当になる。彼は、人間の言葉を理解し、時折、人間のような知性的な瞳でこちらを見つめる、不思議な猿だった。
ある夜、主人公はタロウが檻の中で人間の言葉を喋っているのを聞いてしまう。「たすけて……ぼくは、にんげんだった」。彼は、数年前に行方不明になった小学生「佐藤健二」だと涙ながらに訴える。近所の男に薬を飲まされ、猿の姿に変えられてしまったのだと。
主人公は、彼の荒唐無稽な話を信じ、一人で調査を始める。しかし、真相に近づくほど、健二くんの心は人間であることを諦め、少しずつ、ただの「動物」へと還っていく。檻の中で失われていく少年の魂を前に、彼女は無力感に苛まれる。