あらすじ
極寒の高地で遭難した小さな探検隊は、無線が途絶え、燃料と食料が尽き、気温は−40℃に落ちた。夜が来るたび、隊員がひとりずつ消える。雪面に残るのは、風に消されかけた足跡が描いた文字──「助けて」。犯人は誰か。何が彼らを連れ去るのか。疑念が体温を奪い、視線は凍りつく。やがて告白が落ちる。「この中に、生きている人間はいない」。論理と恐怖、記録と記憶、息と白い蒸気の境界が崩れる時、氷が砕ける音だけが真実を語る。ゼロサムの信頼ゲームを、静かに、確実に、追い詰めるサバイバル心理劇。
主な登場人物
・千石涼真(隊長・35):合理主義の登山家。判断が早いぶん、信頼も失いやすい。
・加納未來(通信・27):無線担当。記録魔。冷静だが眠れない夜が続く。
・東雲隼人(機械・31):発電機とストーブの維持担当。皮肉屋。
・三条柚衣(医療・29):応急処置と体温管理の責任者。仲間を見捨てない。
・ビョルン・ハンセン(測量・33):外国人隊員。黙々と地形と風を読む。
・白取綾(気象・24):最年少。空の色で天候を当てる特技。
・岸浪誠(記録・28):写真と日誌。言葉を選ぶのが遅い。
舞台・設定
高緯度の無名氷原。標高2,400m。仮設の雪洞と破損した山岳テント。唯一の避難小屋は半壊。白夜と極夜の境目にあたり、薄い青の光が一日中続く。