あらすじ
高校一年生、星野雫(ほしの しずく)は、人の感情を色として視る共感覚の持ち主。だが、他者のネガティブな色の濁りに晒される日々は、彼女を人の近くから遠ざけた。自分の感情はいつだって無色――そのことが、雫の孤独を繰り返す理由だった。
安らぎは、亡き祖父が残した古い映写機と、名もなきモノクロの短編フィルムだけ。繰り返し映すうちに、映写室の薄闇だけが彼女を許してくれる場所になっていた。
ある雨の日、いつものようにフィルムを回していると、映像の中の少年が、光と紙の間から雫に語りかける。「やっと見つけた。君は、自分の色を知らないんだね──」と。彼はノアと名乗り、これは未完成の物語だと言う。完成させるには、人の心から放たれる「七色の感情の光」が必要だと。
ノアの言葉に導かれ、雫は心に触れることを決意する。最初の標的は、クラスの人気者が纏う鮮やかな《喜び》。次に、優等生の制服の裾で揺れる静かな《悲しみ》。そして、世界をモノクロで見るという、どこか似た少年との出会い。雫が触れる色は、他人の物語を映し出し、やがて彼女自身の無色を揺らし始める。
これは、フィルムの中の案内人と共に、自分の色を探す少女の物語。色はただ美しいだけではない――記憶と痛みと希望を染める。モノクロの世界が、七色の光でゆっくりと塗り替わるとき、雫は何を選び、何を救うのか。