あらすじ
「きゃああああ!」
「うおっ!」
昼下がりの街中。背後から悲鳴が突き刺さり、おれは反射的に振り返った。
そして次の瞬間、まるで時が止まったかのように体が固まった。周囲の人間も同様に息を呑み、誰もが目を見開き、唯一動き続ける“それ”を凝視することしかできなかった。
男が包丁を振り下ろす、その様を――。
めった刺しだ。馬乗りになり、何度も何度も刃を突き立てる。そのたびに、刺されている男の手や足が魚のようにビクンと跳ねた。肉を裂く湿った音が響く。その執念じみた男の動きに、頭から足の先まですうっと冷えていくような感覚がした。
やがて、動かなくなった。刺したほうも、刺されたほうも。
男はゆっくりと立ち上がった。地面に落ちて踏まれた果実――おれはそれを見て、そう連想した。男もその死体を見下ろし、そう思っているような気がした。
男はふらつきながら、包丁をポケットに押し込もうとした。だが刃が引っかかって入らなかったらしく、シャツをまくり上げて腰の帯に無理やり挟み込んだ。
それから、服の乱れを直し始めた。……いや、あれで隠したつもりなのか。無理だ。この場には目撃者が山ほどいるのだ。あんなのでごまかせるはずがない。
「おい、お前!」
我に返ったのだろう。誰かが怒鳴り、ざわめきが広がった。スマートフォンを構える者もいる。おれは一瞬、「不謹慎な……」と思ったが、いや、あれでいい。逃げ道は完全にない。
男はちらと周囲を見渡し、ポケットに手を突っ込むと何かを取り出した――
「目撃者ゼロカードオオオォ!」