あらすじ
「へえ、それはおめでとう」
駅前のレストランで食事をしながら、男は女に向かって、気のないお祝いを述べた。
この春、その女は大手医療機器メーカーの研究開発チームでサブリーダーに昇格したらしい。
一方、男はほぼ無職。データ入力の内職とコンビニのアルバイトで辛うじて生活をつないでいる。ギャップは、だいたいこの季節に広がる。
男の名前は、桃山大也(ももやまだいや)、29歳。女は同い年の神尾珊瑚(かみおさんご)。交際歴10年、別れるでも結婚に向かうでもなく、倦怠期がダラダラと続いている。
習慣化というか、マンネリというか、毎月第2土曜日の10時に駅前で会い、レストランでブランチをとる。共通の話題は少なく、いつも珊瑚の仕事の話を聞かされる。大也はほとんど聞いてない。