あらすじ
『ヒゼキヤ ― 信仰の城壁 ―』
石の冷たさに、
まだ朝の光は届かない。
瓦礫の都で、ひとりの王が立ち上がる。
閉ざされた神殿の扉に手をかけ、
その指先に、灰と希望がまじる。
香の煙が昇るたび、
かつて沈黙していた民の声が、
風のように甦る。
「神よ、わたしたちを覚えてください。」
その声は涙に濡れ、
やがて賛歌となって天を包む。
敵は鉄の戦車をもって迫り、
夜は祈りの息で震える。
城壁の石の間を抜けて、
ギホンの水がひそやかに流れる。
それは剣よりも深く、
恐れよりも静かな、
見えない救いの道。
病の床に横たわるとき、
彼は天を見上げた。
「私はまだ、光を見たい。」
その願いに応えるように、
影は十度、後ろへ戻った。
時間すらも、神の御手のなかにある。
老いた王は、城壁の上で祈る。
風が白い衣を揺らし、
遠くの鐘が微かに鳴る。
「神よ、この国を、
あなたの息で支えてください。」
そして水は流れつづける。
トンネルの闇を抜け、
光の方へ、
時を越え、信仰を越え、
一筋の希望の音を立てながら。