あらすじ
みわの山いかに待ち見む年ふとも たづぬる人もあらじと思へば 伊勢(古今780)
ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは 秋風吹くと雁につげこせ 在原業平(後撰252)
暮れがたき夏の日ぐらしながむれば そのこととなく物ぞ悲しき 在原業平(続古今270)
簡単に意訳します。
みわの山:恋人たちの大和の三輪山だけど、私には誰も訪ねてくる人はいない
ゆく蛍:蛍よ、雁に秋風が吹いたから、あの人の便りを持ってきて欲しいと伝えておくれ
暮れがたき:夏の夕暮れに喪で引きこもっていると、何もかもが辛くなってしまうね
登場人物
・大納言家の二の姫:(架空の人物です)
・藤原仲平:藤原基経の次男。このとき右衛門の佐。
・近院の大納言:源能有。文徳天皇の皇子だが、臣籍降下して源氏を名乗った。
・大納言の北の御方:藤原滋子。藤原基経の娘。時平・仲平兄弟の年の離れた異母姉。
・藤原時平:基経の長男。このとき右衛門の督。
・伊勢:仲平の恋人。仲平の異母姉の温子に仕えた年若い女房。
・温子:弘徽殿の女御。滋子、時平の異母妹、仲平の異母姉。東七条の后(宇多天皇中宮)。
・在五の中将:在原業平(故人)
・大納言家の三の姫:源昭子。「四の君」藤原忠平の室。
伊勢物語部分の意訳
昔男がいた。大切に育てられた娘がこの男に一目惚れして、恋わずらいに倒れてしまった。死に際にようやく死ぬほど男を思っていたと言い、親は男に泣きながら来て欲しいと言った。男は慌てて娘のところに行ったが、娘は死んでしまった。男は夫として喪に服した。六月も末で大変暑い日に娘の追悼に楽器を弾いていた。夜になって涼しくなって蛍を見ながら男は横になり娘を思った。
蛍よ、雁に秋風が吹いたから、あの人の便りを持ってきて欲しいと伝えておくれ
夏の夕暮れに喪で引きこもっていると、何もかもが辛くなってしまうね
(ちゃんとした訳は、伊勢物語(上)全訳注 阿部俊子著 講談社学術文庫でどうぞ)