あらすじ
死んだ、と思った。満員電車の急停止。守ったのは、落とした小説一冊だった。
ページがひらりと風にめくれる。そこには、私が何百回も読み返した一節。
『——彼は、彼女のために死んだ。愛の証として。』
涙で滲んだ文字。私の“推し”は、そのページでいつも死ぬ。どんなに何度読んでも、変わらない。
「……ほんと、やめてよ。何度読んでも泣くんだから」
そう呟いた瞬間、視界が暗転した。
そして次に目を開けたとき——私は、その小説の世界にいた。
——リリアーナ・ヴァーレンティナ。
恋愛小説『薔薇と剣の誓い』の悪役令嬢。
そして、物語の終盤で推しを死に追いやる張本人として。
(……よりによってここ!?)