あらすじ

『遺産の亡霊 ― 葬儀も終わらぬうちに ―』

線香の煙が 天井を撫でる
まだ葬儀も終わらぬうちに
玄関のチャイムが鳴った

黒い喪服の裾を整え
私は微笑む 
――そう、戦いの始まりに

仏間に沈む 夫の写真
ガラス越しの瞳が
「泣くな」と言っている気がした

通帳の紙の匂い
朱肉の冷たさ
親族の囁きは 虫の声のように群れ
香典の封を指先で数える音が 夜を裂く

「あなたの財産を守ります」
そう言ったのは誰だったか
守られたのは、嘘だけだった

けれど、私は知っている
人の欲より強いのは
“真実”という 静かな灯

焦げた茶の湯気の向こう
夫の遺したメモが
風にめくれて ひとつの言葉を見せる

――「全部、君に」

涙は落ちず
ただ頬に 春の光が触れた

遺産は金ではなく
愛の記録
亡霊は消え
私だけが、生きている

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アルファポリス
アルファポリス2025/10/23
  • 現在の作品『遺産の亡霊 ― 葬儀も終わらぬうちに ―』