あらすじ
戦後の混乱に沈む山間の村。
十余年閉ざされた薬師堂に、再び灯がともる――。
再建事業を掲げて戻った矢萩英一郎。
かつてこの地で“神の器”と呼ばれた女・ふさを失い、
彼はその面影を、若き奉公女・弥生の中に見出す。
やがて弥生は夜ごと堂に籠り、
“おおこがね様”の声を聞いたと語る。
沈黙の祈りは人々を惹きつけ、
信仰は再び形を得て――
だがその光は、誰も救わなかった。
神を創った男と、神に選ばれた女。
そして、ふたりの間で生まれた沈黙の子。
信仰と血がめぐる三代の記録が、今、掘り起こされる。