あらすじ
大学生の彩葉(いろは)は、試験明けの帰り道で無口な先輩・真琴(まこと)と偶然出会う。真琴は美術研究を専攻する変わり者で、表情は少ないが料理の手は驚くほど繊細だった。二人は、古ぼけたテナントを借り、小さな食堂を始めることにする。だがこの店は普通ではない――真琴のつくる料理には、食べた者の「小さな願い」をかなえる力がある。
客は日常に疲れた人、秘密を抱えた人、忘れたい過去を引きずる人ばかり。料理はその願いに寄り添い、時にほっこりと慰め、時に静かに事件を巡らせる。真琴の過去と、異能の源が少しずつ露わになるにつれて、店は狙われる。だが真琴の寡黙さと彩葉の明るさ、そして食事でつながる人々の絆が、この店のいちばんの武器となる――日常の温度と、時に鋭い余波を伴う連作短編(予定)