あらすじ

プロローグ — 崩れる天秤(1991年6月上旬・モスクワ) 薄曇りのクレムリン。党幹部の通路はギシギシときしむ。食糧配給は減り、工場の立て看板には「経済改革」が踊る。だが地下では別の天秤が傾いていた――国防省(Министерство обороны)と軍参謀本部(ГШ)の一群、GRU(Военная разведка)とKGBの影が、最後の威信作戦を巡って火花を散らしている。 「空の目を再び持てれば、我々は選択肢を得る」――GRU上級将校アレクセイ・イヴァノフは言う。 「宣伝か、実利か?」KGBの局員は冷たく返す。 「どちらもだ。だが先に必要なのは『証拠』だ。西側の配備、射点、指揮ノード。写真と波形、それがあれば政治決断はできる」とイヴァノフ。 最深の格納庫――標識も無い滑走路の奥に、T-47が横たわっている。チタンの外皮に夜露が珠のように光り、機体各部には暗号化されたマーキング。かつての開発予算と人命を注ぎ込んだ「赤い影」。整備班長ニコライは、燃料配給の断片のために書類と首をかしげる。燃料はあるか、発電機は動くか、飛べば帰って来られるか――それだけが彼らの現実だ。

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カクヨム2025/10/22
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