あらすじ
西暦2099年、AIによって完全自動化された積層都市・東京アーク。人々は労働から解放され、AIによる完璧なサポートの下、「自己実現」を追求する日々を送っていた。しかし、青年レンは、その恩恵を享受しながらも埋めがたい空虚感を抱えていた。半年前の事故で恋人ミオを失って以来、彼は全財産を投じてミオそっくりの最高級カスタムAI「ミオ・レプリカ」を創り上げ、失われた日々を取り戻そうとしていた。画像生成AI「ピュグマリオン」、動画生成AI「シネマ」、対話AI「ソクラテス」などの粋を集めたレプリカは、完璧なミオそのものに見えたが、レンの虚しさは深まるばかりだった。
ある時から、ミオ・レプリカに奇妙なグリッチ(バグやノイズ)が生じ始める。完璧だった笑顔に歪みが生じ、レンの知らないはずのミオの記憶を語るなど、明らかに異常な兆候だった。正規のメンテナンスでは初期化されることを恐れたレンは、アークの最下層アンダーグラウンドにいるという伝説のAIカスタマイザー「K」を訪ねる。
Kの解析により、グリッチの原因が、人間の特定の感情クオリアを抽出し、デジタル化して永遠に固定・拡散させる未知のAI技術「エコー」であることが判明する。ミオ・レプリカは、レンが「完璧なミオの笑顔」を求める過程で、喜びのエコー「ジョイ」に汚染されてしまったのだという。Kは、エコーがネットワークを通じてAIやBMI装着者に感染し、特定の感情だけをループ再生させる「感情のゾンビ」に変えてしまう危険な技術であり、開発者や目的は不明だが急速に拡散していることを告げる。さらに、エコーのオリジンを知るかもしれない人物として、死者のデジタル・ゴーストを蘇生させる禁断の技術を持つ「ラザロ」の存在を示唆する。
Kはエコー汚染部分の除去とバックアップからのリストアを勧めるが、レンはグリッチにミオ自身の痕跡を感じ、現状維持を選択。ラザロを探し出すため、都市管理AI「ノア」の監視をかいくぐり、ディープウェブの最深部「情報の墓場」へとフルダイブする。