あらすじ
白いペット〈エキドナ〉が都市を侵す。
母と子の祈りが、沈黙の眼に呑まれていく。
桜山の街に、新しいペットショップ〈メゾン・ラミア〉が開店した。
師範代・神原美沙は、息子の蓮と立ち寄っただけのはずだった。
白く丸い生き物〈エキドナ〉――鳴かず、静かに寄り添うだけの“愛玩種”。
蓮がその一体を見つめ、「この子がいい」と呟いた瞬間から、母子の運命は静かに狂い始める。
エキドナを迎えてから、蓮は穏やかになった。夜泣きも減り、笑顔が戻った。
けれど、ある日を境に、会話が成立しなくなる。呼びかけても、返事がない。
道場では、蓮と友人たちが“同じ動き”を見せるようになっていた。
まるで見えない合図に従っているように――。
やがて、町のいたるところで“白いペット”が同じ行動を取り始める。
犬や猫は怯え、飼い主の声に応えない。
深夜、無数の白い影が連なって歩く光景を、美沙は見てしまう。
それは、子供たちの夢と都市構造をつなぐ“何か”の胎動だった。
民俗学者・久世燈子は、ペット現象と古代信仰の一致を指摘する。
「祈りを忘れられた母の象徴――ラミア。
その名を持つ存在が、都市の〈視線〉を集めている」
暴徒化する子供たち。崩壊していく社会。
そして、蓮の中に宿りはじめる“眼”の意識。
母は、子を護るために立ち上がる。
その拳が、祈りを断ち切る剣となる。
――「お前は母じゃない。子を支配する母なんて、母じゃない!」
『ラミアの眼』は、母性と祈りをめぐる黙示の物語。
都市という巨大な胎内で、人と意識が同化していく恐怖を、
静かな祈りとともに描く〈Echidna Project〉第一篇。