あらすじ
—感情がチケットになる街で—
日本から南へ三千キロ。
そこは、感情までもがシステムで管理される街だった。
マニラのビジネスセンター。
山岸豊和(やまぎし・とよかず)は、日本からやってきたコールセンター社員。
画面の中では「赤・黄・緑」のチケットが点滅し、
遅れると給料が下がる。
仲間はインドネシア、フィリピン、マレーシア……世界中の若者たち。
でも、誰もが自分の“名前”を守るのに必死だ。
山岸の上司、中村恵子(なかむら・けいこ)は、
家でも仕事みたいにWBS(ダンドリ表)で恋人と感情を共有する“管理の女王”。
そしてそこに現れるのが、天才的な共感力を持つ
元教師アンジェリカ。
「私は、ホセ」と書かれたバッジを胸に、
名前を番号に変えようとする会社に立ち向かう。
一方で、山岸はというと——
ゲームの中で三十五人の“妃”を育て、
ターキーの冷凍ディナーを電子レンジで温める夜。
だけど、彼が本当に求めているのは、
“誰かに名前を呼ばれること”だった。
やがて出会うのは、建築デザイナーのトモカ。
「ケアは癒しでも搾取でもない」と語る彼女が見せる、
“祝祭”の設計とは――?
世界の果てのようなオフィスで、
怒りと笑いと、ちょっとの恋が交錯する。