あらすじ

ヴェルダ・クローネの旧街区。 石畳の路地裏にひっそりと佇む家紋工房《アルマ=ヴェルク》には、 “記録する羽根”と呼ばれる家紋師レイナ・ヴァシュタールが暮らしている。 ある日、ひとりの老女が訪ねてくる。 彼女は「戦で滅んだ家の家紋を、思い出のために蘇らせてほしい」と願い出た。 持ち込まれたのは、焦げ跡が残る小さな木片―― それは、もう記録からも消えた家《ローデリア家》の最後の欠片だった。 レイナは沈黙のうちに依頼を受け、 血を媒介として失われた“理”を呼び戻す再構築の儀を始める。 焦げた線が少しずつ浮かび上がり、 そこに現れた意匠は――「守る」ではなく「迎え入れる」形をした家紋。 家族を守りきれなかった者の祈り、 それでも誰かを“帰す”ために刻まれた、赦しと帰還の印。 老女は涙ながらに名を告げる。 「……《白薔薇の帰環》。――帰る輪、という意味です。」 レイナは記録帳に静かに筆を走らせる。 《この家は、確かに在った。》 それは証明ではなく、記録。 人が忘れても、形は残る。 そして形は、忘れた者が帰るためにある――。

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小説を読もう2025/10/22
  • 現在の作品家紋師レイナ・ヴァシュタールの日常