あらすじ
かつて、ひとりの恋人を救うために、ひとりの少女は愛の記憶を差し出した。
その約束は、時を越えて“風”となり、異世界リヴラシアを漂っている。
記憶が宝石に変わり、人々がそれを売り買いして生きる街。
ただし、恋だけは換金できない──愛を思い出した者は、魂を失うから。
記憶修復士セリアは、依頼人の心を癒やす仕事の中で、
自分の声で“ライル”という名を呼ぶ残響を聴く。
それは、忘れたはずの前世の恋人の名だった。
無名の吟遊詩人ライル。
声を失いながらも、世界の風に歌を残す男。
彼こそが、かつて彼女を救うために愛を手放した存在だった。
“愛を禁じられた世界”で、ふたりは再び惹かれ合う。
記憶を取り戻すたび、世界が崩れていく。
声を失いながら、彼は歌い、
涙を流しながら、彼女は記憶を再生する。
それは――滅びゆく世界に残された、最後の愛の旋律。
記憶は消えても、歌だけが生き続ける。
「私は、彼の歌を歌うために生まれた」
沈黙の風が、ふたりの約束を運ぶ。