あらすじ
海に面した町・多賀城市で暮らす高校三年生、青井悠真(あおい ゆうま)
何をしても本気になれず、ただ“この町から出たい”という焦りだけを抱えていた
そんなある夏の日、都会から転校してきた少女、佐倉陽菜(さくら ひな)と出会う。
陽菜はどこか不思議な子だった。
授業中でも空を見上げては「今日の空、いつもより青くない?」と微笑む。
その言葉に惹かれるように、悠真は陽菜とともに写真部の活動を始める。
ファインダー越しに見る世界は、これまでの退屈な日々とは違って見えた。
海の輝き、風の匂い、友達の笑顔――
“今”を残そうとする陽菜の姿が、悠真の心を少しずつ変えていく。
しかし、陽菜にはある秘密があった。
彼女の心臓は重い病を抱えており、もう長くは生きられない。
それでも彼女は笑って空を撮り続ける。
「この空を見られる時間があるだけで、私は幸せなんだよ。」
夏祭りの夜、
花火の下で陽菜は静かに打ち明ける。
涙をこらえながら、悠真は約束する。
――「俺が、君の見た空を残す」
季節がめぐり、陽菜はいなくなった。
けれど、悠真の心には彼女が見せてくれた“青空”が残り続けていた。
そして一年後。
カメラを手にした悠真は、空を見上げて呟く。
「陽菜、見えるか今日も空が、いつもより青いよ。」