あらすじ
東京都心の片隅で、メンデレ秀城(32歳)は人生に絶望していた。
かつて量子化学に没頭した理系修士である彼は、研究の夢に挫折し、今は専門知識が一切不要な営業事務として無為な日々を送っている。上司の指示を無視し、疲労と虚無感に突っ伏す彼の心の拠り所は、かつて研究室の壁に貼られていた「周期表」の美しい秩序だけだった。
元素記号を心の中で唱え、深い眠りに落ちた秀城が次に目覚めたのは、ファンタジー世界のような緑豊かな森の中。
目の前に突如現れたのは、自身の能力を示すRPG風の「ステータス画面」だった。現実の物理法則が通用しない世界にパニックになる秀城を、魔物「グレイウルフ」の牙が襲う。絶体絶命の窮地を救ったのは、炎の魔法を操る赤髪の少女、ナトリ・エルフレアだった。
彼女の名は「ナトリウム」から取られ、この世界には元素の性質を力に変える「元素魔法」が存在するという。
秀城が愛し、熟知していたはずの元素の知識が、元の世界で無価値になった彼にとって、この異世界で唯一にして最大の武器となる可能性を示唆する。
「メンデレ」という名を背負った元科学者は、自らの知識と絶望を捨て、新たな世界でその真価を発揮できるのか?