あらすじ

ある日、差出人のない小包が届く。 それを開けた者は、衣服を残して消える。 家族は名を思い出せず、同僚は履歴を削除し、社会はそれを“データ不整合”として処理する。 異常は静かに、規範の中へと吸収されていった。 やがて、個人の失踪は統計の一点となり、統計は制度の下に埋もれ、 制度は「誰も失われていない」と結論づける。 人々は安堵し、忘却し、世界はそのたびに一人分、静かに薄くなっていく。 それでも、ただ一人だけが気づいていた。 誰かがこの“消失”を記録し続けている。 そして、箱は届き続けている。 差出人のいないまま、宛名だけが増えていく。 記憶も、記録も、存在も——すべてが、 システムの中で均質に溶けていく。 あなたが開けたその瞬間、世界はあなたを“初めから存在しなかった”ことにするだろう。

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カクヨム
カクヨム2025/10/20
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