あらすじ
『ソドムとゴモラ』
夜が裂けた。
砂漠は血のように赤く、
風が骨をなぞる。
「おまえは神に逆らうのか」
誰かが問うた。
「いいえ」
彼は答えた。
「ただ、君を愛しているだけだ」
月は砂丘に沈み、
二人の影が重なった。
焚香の煙が絡みつき、
肌の上で祈りのように揺れた。
――この街は滅びる。
だが、唇はまだ温かい。
――神の声は怒りを告げる。
けれど、指先は離れない。
炎の雨が降り注ぐ中、
彼は笑った。
「ソドムが燃えても、僕らの罪は光だ」
彼は泣いた。
「ゴモラが崩れても、君の名は風に残る」
焦げた空気、
燃える香木、
そのすべてが愛の匂いになっていく。
焼け落ちる街の音が、
心臓の鼓動と混ざり合う。
砂が熱い。
皮膚が痛い。
それでも抱き合う。
「救われたいか?」
「君となら、地獄でいい」
灰の中で、
彼らは静かに口づけを交わした。
夜明け――
風が、灰の海に花びらをひとひら落とす。
それは、赦しの形をしていた。