あらすじ

ヴァシリール王国の国王アヴァロが隣国に宣戦布告して始まったその戦争は「羊戦争」と呼ばれた。王国中の奴隷と平民を起用したこの5年もの長きにわたる全面戦争は2年前、ヴァシリール王国の敗北という形で終結した。さらに開戦時に「従軍した奴隷を戦争後に解放して自由民にする」と約束していたアヴァロは敗戦を理由にこの約束を破った。 この戦争に従軍していた奴隷青年セルウスは、戦争を起こし、奴隷をこき使い、さらに奴隷解放の約束を破った王族を強く憎んでいた。セルウスはアヴァロの甥・王子フィーロに接触して彼を殺そうとするが、フィーロ王子は堂々とした高潔な人物で奴隷制度を嫌っていた。 なおも激しく怒るセルウスに、フィーロは国王アヴァロから王位を奪う計画を明かす。フィーロの姉、王太子クラヴァラが女王になった暁には、奴隷制度を廃止するという。フィーロとその一党がこれらの計画の遂行に能う人物か否か見極めるべく、セルウスは旅の途中だった王子一行に加わる。さらにセルウスはフィーロの魔法の糸「運命糸」で傷の手当てを受ける。 フィーロ王子は王太子クラヴァラと共に王位簒奪の準備が完了したことを確認し、その期日を定める。その晩フィーロは、態度を軟化させつつあったセルウスに、自身も羊戦争に従軍したことを明かす。大切な者を喪い心に傷を負った者同士、フィーロとセルウスは互いに強い愛着を抱く。 王位簒奪を王都の内部から支援するフィーロ王子一行は王都に帰還。だが宮廷内で王子に向けられる下心に我慢ならないセルウスは、周囲の協力を得て国王アヴァロの宴席からフィーロを連れ出し、互いの気持ちを確かめ身体を重ねる。そしてフィーロは以前セルウスの傷を縫った魔法の糸「運命糸」を彼に託す。 だが王位簒奪にあたっての王子の「王侯貴族と奴隷、どちらの味方なのか分からない」計画を聞くとセルウスはこれに強く反発。やはり王族であるフィーロとは理解し合えないと宮廷を抜け出す。だが王都貧民街の奴隷たちとの会話の中でセルウス自身も自分が「王侯貴族(フィーロとその仲間)と奴隷、どちらの味方もしてやりたい」と思っていることに気づき、改めてフィーロを支えることを決意し、宮廷に帰参する。 ついに王位簒奪の計画が始動、クラヴァラ王女とその同盟者たちの挙兵の知らせが王都に届く。王都はその門を固く閉ざし、フィーロは尋問のために捕まる。王女が王都に到着したその日の夜に救出されたフィーロは、閉鎖され混乱する王都で暴徒化した奴隷によって瀕死の重傷を負う。だがセルウスが預かっていた運命糸が奇跡を起こし、一命を取りとめる。そしてセルウスと共に、王都正面門を開いてクラヴァラ王女を迎えるように呼びかける。二人の決死の説得に王都の人々はクラヴァラを新しい女王として迎えることを決めて門を開き、新たな女王が即位する。 事態が落ち着くとセルウスとフィーロは、王子と部下、恋人同士として互いの側にいることを約束して指切りを交わす。

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カクヨム
カクヨム2025/10/20
  • 現在の作品赤い糸は階を超えて