あらすじ
あの日のことは、
まるで断片的な夢のように覚えている。
小さく不規則に呼吸をする白い蛇を抱えながら、
薄暗い樹海のような場所を、ただひたすらに走り続けていた。
幼い足はぬかるんだ土に何度も沈み、心臓は破裂しそうに脈打つ。
喉は血の味に焼かれている。
途中、太い根に躓(つまず)き、大きく視界が揺れた。
重心を崩し、地面の裂け目を転げ落ちる。
その勢いで岩に全身を打ち付ける痛みに、思わず声が漏れた。
バシャン!
底の、深い水面へ背中から叩きつけられた。
急激な体温の低下を受けて脳は錯乱し、
黒い水の中で上下の感覚さえ分からなくなる。
そして力尽き、
肺に残された空気は吐き出され、
ゆっくりと沈降すると同時に
僕の意識は途絶えた。