あらすじ

この世界には、「涙を宝石に変える」魔法がある。  けれどそれは、幸福の涙では決して光らない。  かつて“天使の書記”と呼ばれた私は、翡翠の都《エルア》で禁書の筆を執っていた。  人々の祈りを記すこと、それが私の使命だった。だが、誰も祈らなくなった日、私は筆を捨て、涙を集めはじめた。  裏通りで泣き崩れる者、愛を失い呆然とする者、信仰を売った神父――その涙を一滴ずつ小瓶に閉じ込める。  それが宝石に変わるたび、私は幸福に酔い、腐っていった。  “美しいもの”は、いつだって汚れの上に咲く。  そのことに気づいたのは、最後の涙を瓶に注いだときだった。  その翡翠の輝きが、私自身の瞳を喰らいはじめた。

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カクヨム
カクヨム2025/10/19
  • 現在の作品翡翠の雫