あらすじ

貴族の家に養子として迎えられた少年ファルーは、 なぜか理由も分からないまま、家中の人々から冷たく扱われていた。 使用人たちからも距離を置かれ、挨拶をしても無視される日々。 畑仕事などの重労働は一人で押し付けられ、 それでも彼は「自分が頑張れば、きっと家族と仲良くなれる」と信じて野菜を育て続けていた。 しかし、どれだけ努力しても状況は変わらず、 次第に「自分が嫌われるのは、自分のせいだ」と思い込むようになる。 そんな彼の支えになっていたのは、 たびたび夢に現れる“雲の上のような場所”と、“見知らぬ青年”の存在だった。 夢の中で優しく微笑んでくれるその人は、名前も知らないはずなのに、どこか懐かしく、あたたかかった。 ファルーはその夢を見るたび、心が癒され、「もう少しだけ頑張ろう」と思えるのだった。 現実世界での唯一の癒しは、森にある湖のほとりで一人静かに過ごす時間。 誰にも知られていない抜け道を通って、密かに通い続けていた。 ある日、そんな彼の前に――夢で見た“あの人”にそっくりな青年が、湖に現れる。 青年はルアンといい、どこか上品で落ち着いた雰囲気をまとっていた。 お互い初対面のはずなのに、なぜか心に引っかかるものがある。 ふたりはまた会おうと約束し、それから時折、森で会うようになる。 ある日、嫌がらせで鍬(くわ)を隠されたファルーが素手で畑仕事を続けて手を怪我した際、 ルアンは驚くほど丁寧に手当てをしてくれた。 「こんなに優しくされたの、初めてだ……」 ファルーは不意に涙をこぼしてしまった。 勉強してみたいという願いを打ち明けると、ルアンは快く文字を教えてくれた。 そのお礼がしたいと言うと、ルアンは「君の歌が聞きたい」と微笑んだ。 ファルーは恥ずかしがりながらも、いつ覚えたかもわからない不思議な歌を口ずさむ。 それを聞いたルアンは、初めてのはずなのに「なぜか懐かしい」と目を細めた。 そうして少しずつ、優しく、心を通わせていく。 “記憶にない記憶”が、ふたりの距離を静かに縮めていった。 身分も生き方も違うふたり。けれど、奇妙な懐かしさと、何かを取り戻すような想いに惹かれていく。 この出会いは偶然ではない。 ふたりには、お互いさえも知らない“深い繋がり”があった。 やがて世界の理に抗うように、いくつもの障害がふたりに降りかかる。 それでも、どれだけ離れても、 どれだけすべてを忘れても、 心はなぜか、彼を探してしまう。 数え切れない別れと再会。 それでも何度でも、どんな形でも、君に会いに行く。 「僕があなたを愛するのは、 あなたに愛されたいからじゃない。 あなたが好きだから、愛したいと思うんだ」 そんな想いが、届かなくても構わない。 ただ、もう一度――君の笑顔を見たいだけ。 これは、何度生まれ変わっても “たったひとりを愛し抜く”魂の物語。 愛と再会、癒しと救いの旅路。 そして――空の彼方に、確かに、“本当の愛”はあるのだから。

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カクヨム
カクヨム2025/10/19
  • 現在の作品空の彼方に愛はある