あらすじ
―― 100年前の日本、一人の女性の「魂の絶叫」は、なぜ歴史から消えたのか。
大正時代、東京の下町。美しく聡明な文子(ふみこ)の日常は、家業と「良妻賢母」を求める家族の重荷、そして重い市場かごの中にあった。
彼女の密かな情熱――それは、小説を書くこと。
誰も認めないその才能を、当時の文壇の寵児、のちの文豪となる理知的な青年だけは高く評価し、二人は魂で結ばれた盟友となる。文子は彼に密かに恋心を抱くが、彼は「芸術」を愛し、「現実の愛」を拒絶した。
理想の愛に拒絶され、絶望した文子を救ったのは、彼女を「俗物」と罵り、馬鹿にしていたはずの市場の**不器用な男(信吾)**だった。衝突と献身を経て、二人は時代に抗う激しい愛で結ばれ、彼女は傑作と、一つの命を遺して若くして世を去る。
それから一世紀後の2025年。作家志望の黒瀬智哉(47歳)は、偶然見つけた一束の原稿と、芥川龍之介の晩年の言葉から、文学史に存在しないはずの「文子」という天才の足跡を辿る。そして、彼の身近な人物が、文子の愛が繋いだ**「ひ孫」**であったことを知る時、100年の封印が解かれる――。
時代に埋もれた才能と、時代を超えた愛の真実を描く、慟哭の連載大河ロマン。