あらすじ
記憶再構築士・小野寺瞬は、他人の記憶を映像として再現するという特殊な仕事を淡々とこなしていた。そんな彼のもとに、三ヶ月前に亡くなった兄の記憶を調べてほしいという依頼が届く。依頼人は妹の三浦奈々。兄・浩一が生前繰り返し口にしていた謎の言葉──「誓いは、時計の裏に」──その意味を知りたいという。
瞬は、浩一の遺品から記憶を復元し始めるが、映像の中には不可解な矛盾と違和感が次々と現れる。年号のずれ、客観的すぎる視点、不自然な編集のような記憶の断片……。やがて瞬は気づく。浩一は、自らの記憶に“伏線”を仕込み、未来の誰かにその回収を託していたのだ。
やがて奈々と共に見つけ出した鍵と古い映像から、浩一が家族の秘密を守るため、記憶というレールに真実を埋め込んでいたことが明らかになる。
人は、自分の人生に意味を持たせるために伏線を張る。
それは回収されることなく終わるかもしれない。
それでも、人は誰かに物語を託して生きていく──。
記憶の断片から浮かび上がる“人間”の物語。
伏線だらけの人生を生きるすべての人へ贈る、静かで深い短編小説。