あらすじ
王都の片隅にある小さい酒場。
そこには一人の中年の男と、魔女と恐れられる女が二人で住み込みで経営しており、賑やかながらも静かな時間を過ごしていた。しかし、そんな彼らの安寧の時間はいつも簡単に崩されてしまう。
「申し訳ありません、ガルウェン様。少し相談したいことが……」
「アグルレンドさん、街の外で魔物が暴れているんですけど……」
「ガルウェン殿、また護衛をして頂きたいのですが……」
「俺、もう騎士団を引退したんだけど……」
そんな彼女達に彼は苦笑いでそう言う。
彼の名前はガルウェン・アグルレンド。
この王都にある騎士団で隊長を務めていた彼は、四十歳を超えたのちに色々あって騎士団から追放されてしまい、王都の片隅で酒場を経営して余生をゆっくり過ごそうと考えていたのだが……そんな彼を周りは放っておいてくれたりはしなかった。
時には街のギルドの受付の少女から魔物の討伐依頼を頼まれたり、時にはこの王都の衛兵の仕事を頼まれたり、果ては元部下でこの国の王女でもある姫騎士が彼の家にやってきて相談に来る。
そうして、彼が気付かないうちに、魔物の討伐や反乱軍の鎮圧から王族の護衛、さらには魔女の討伐作戦まで任されるのだが……それって、引退した騎士にやらせて本当に良いの?
そんなことを思いながらも、引退したはずの彼は今日も剣を握る。
こうして、老騎士と呼ぶには少しだけ早い中年のおっさんのちょっとした英雄譚が始まるのだった―。