あらすじ
深夜の産科の待合室。消毒の匂いと機械音が等間隔を刻むなか、「私」は窓の四角に切り取られた月の円を見つめ、夜を数える。看護師の短い報せ、自販機の赤い小さな円、雲にくぐもる光――待つ身体は外の世界を「測る」行為に救いを求める。やがて窓を指の幅だけ開けると、冷たい空気が入り、視界は少しだけ変わる。呼び出しに応じて向かった先で、小さな手に触れる。そこで定規は窓枠から指の幅へと移り、世界の大きさは内側から決まり直す。夜明け前、月は低く小さく見えるが、小さくなったのではない。測り方が変わったのだ。「私」は窓を閉じ、静かな拍に合わせて朝へ歩き出す。待つことの時間、見え方の転換、誕生がもたらす尺度の更新を、円と四角のモチーフで描く純文学。