あらすじ
有能な若手医師、白井健は、森に囲まれた最先端医療研究施設に赴任する。表向きは革新的な治療を行う施設だが、その奥には人の記憶と感情を操作する異常な実験の痕跡が隠されていた。
初めて出会った患者・斎藤俊介は、感情を失い、記憶は断片化していた。診察を進めるうちに、白井自身の記憶や理性が徐々に侵食され、夢と現実の境界が揺らぎ始める。信頼していた同僚や上司たちの行動も次第に疑念を生み、孤独と恐怖が深まっていく。
やがて白井は、自分自身がこの施設の被験者であり、感情も記憶も理性も完全に支配されていることに気づく。森の影と施設の冷酷な深淵に囚われた彼の姿は、光も出口も届かぬ永遠の暗闇に沈んでいく。
心理と感覚の境界を崩しながら、読者を深淵の迷宮へ誘う、医療ミステリと心理ホラーの極致。