あらすじ
これは、すべてを失った元王女が『愛人』という仮面を使って始める、静かな復讐と恋の物語。
王女として生まれたセレニアは、二年前に若き公爵イクス・アデルハインドと結婚した。
政略的要素の強い結婚ではあったけれど、幼馴染でもあるイクスと自分は愛し合っていると信じていた。
……聖女候補エリカが、現れるまでは。
王宮に現れた聖女候補の前で、夫は簡単に誓いを裏切った。
王族としての居場所も、公爵夫人としての矜持も、夫の愛さえ、セレニアは聖女候補エリカに奪われていく。
百年ぶりの聖女の登場に喜び、誰もがエリカとイクスを祝福するなか、セレニアだけはその恋を応援することはできない。
イクスがもう自分を愛していないなら――そう決意して離婚を切り出したセレニアに、イクスは冷たくこう言った。
「きみも愛人を作ればいい」
信じられない言葉だったけれど、セレニアは彼に対抗するために、偽の愛人を作ることにした。
愛人役として選んだのは、聖王国から派遣された『神託検証官』ジェイド・グランフォード。
聖職者とは思えないほど色事に慣れている彼は――なぜかセレニアにだけ、優しい。
セレニアの境遇を知ったジェイドは、愛人を演じることを引き受け、なおかつこう言った。
「これ以上、あなたを傷つけさせはしない。彼らが踏みにじったものが何であるのか、思い知らせてやりましょう」