あらすじ

王城の片隅。
リリアは銀のバケツを抱えて廊下を磨いていた。
指はひび割れ、袖口は汚れ、魔法の光が灯る豪華な廊下に彼女の影だけが薄く落ちる。
「雑巾、そこ磨き残ってるよ!」
上級メイドが冷たく言い放つ。
「……はい、すみません」
そう言って頭を下げるリリアの胸の奥では、いつも何かがざわめいていた。
(なぜ、こんなに光が痛いんだろう。なぜ、この国の魔力が息苦しいの……?)
夜、誰もいない地下室で、彼女は壊れた魔導具を直していた。
そのとき――黒い影が現れる。
「……何をしてる?」
振り返った先にいたのは、角のある青年。ノア。
彼は王に仕える“竜人族の奴隷”と呼ばれる存在だった。
「あなたも、働かされてるんですね」
「働かされてる、か……違う。生かされてるだけだ」
彼の瞳は銀に光り、どこか悲しかった。
リリアはその目を見て、初めて“対等”な痛みを感じた。
――その夜から、二人は少しずつ言葉を交わすようになっていった。

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