あらすじ
あらすじ
失踪した愛猫「リリ」を探すうちに、男は自分の記憶だけが世界からズレていく奇妙な現象に見舞われる。リリが残した一台の懐中時計。その秒針が一つ進むたび、男は別の時間軸、別の可能性の世界へと強制的に転移させられた。
自分が何者なのかというアイデンティティすら摩耗していく過酷な旅路のなか、彼は世界の歪みを修正する謎の組織「監視者」に追われ始める。やがて、愛猫リリが世界の根幹を揺るがす「鍵」であると知った男は、幾千もの世界を渡り歩き、ついに全てが修正された「正しい世界」へとたどり着く。しかし、そこで彼を待っていたのは、リリと幸せに暮らす「もう一人の自分」の姿だった。
自分が「選ばれなかった」存在であることを突きつけられた絶望の果て、男は「時間犯罪者」として指名手配される。これは、愛猫を探す一人の男が、やがて全ての時間軸から追われる孤独な逃亡者になるまでの物語。
登場人物
僕(主人公)
失踪した愛猫リリを探す青年。リリが残した、時空を渡る能力を持つ懐中時計を手にしたことで、無数のパラレルワールドを彷徨うことになる。リリと過ごした記憶だけを頼りに旅を続けるが、その記憶すらも世界の波に侵食され、自己の存在意義を見失いかけていく。
リリ
主人公が飼っていた三毛猫。物語の冒頭で姿を消す。彼女の失踪が、世界の歪みと主人公の過酷な旅の引き金となる。単なる猫ではなく、時間軸の安定を司る「アンカー」のような特殊な存在であることが示唆される、物語の鍵を握る存在。
黒いコートの男たち
主人公が移動する様々な世界に現れ、彼を追跡する謎の組織。世界の秩序を維持する「監視者」であり、不安定要素である主人公と、彼が持つ懐中時計を「処理」しようと目論む。
もう一人の僕
主人公が旅の果てにたどり着いた「正しい世界」で、リリと共に平穏な日常を生きる男。主人公と全く同じ姿をしながら、彼が失った全てを手に入れている。主人公に「選ばれなかった者」という残酷な現実を突きつける鏡像的存在。