あらすじ
美術界の若き天才画家、九条絢人は、自らの傲慢な才能によってすべてを失った。彼が贋作に仕掛けた「見えない色彩」は、彼の視界からすべての色を奪い、彼自身に「呪い」となって降りかかる。
だが、その呪いは彼一人を蝕んだのではない。
九条の研究チームの一員だった調香師・香澄雫は、研究の毒によって嗅覚が異常に鋭敏化。世界中の匂いが、彼女にとって耐え難い「不協和音」となり、孤独な苦痛に囚われる。
そして、感情の欠落に飢える小説家・水沢漣は、このスキャンダルを自身の「感情なき勝利」という物語を完成させるための、最高のプロットだと見抜く。
色彩を失った画家、匂いに苦しむ調香師、感情を欠いた小説家。三人を結びつけたのは、愛でも信頼でもなく、九条の「原罪」が世界にばら撒いた「因果の鎖」だった。
美術館で発生した、絵画の色彩がすべて消えるという奇妙な事件。これは、九条の過去の「色彩」と、犯人の「毒」が反応し、三人の運命を弄ぶ「本当のゲーム」の幕開けに過ぎなかった。
これは、謎を解くミステリーではない。互いの罪と孤独、そして剥き出しの欲望を利用し合う、三人の天才による冷徹で歪んだ心理サスペンス。
彼らの物語は、どんな色彩を取り戻すのか。それとも、永遠に色を失ったまま破滅するのか。