あらすじ

料理評論家の鏡子は、ある日突然「料理を言語化できない」症状に陥る。 舌の上で味が溶けた瞬間、すべての形容詞が意味を失った。 その夜、彼女のもとに届いた一通のメッセージ。 「言葉を食べに来ませんか――レストラン・シンタクス」 地下四階に広がる白い空間。 そこで鏡子が口にしたのは、透明な「主語」、赤黒い「述語」、そして空の皿に盛られた「目的語」。 料理を食べるたびに、彼女の身体が文法構造に変換されていく。 皮膚に浮かぶ形容詞。 内臓で発酵する接続詞。 骨格が語順に従って再配置され、血液が過去・現在・未来に分裂する。 給仕の姿は、次第に亡き母の顔に重なっていく。 不器用で、いつも焦がしてばかりだった母の料理。 「残すな」と言い続けた母の声。 鏡子は理解し始める。 母は毎日、自分自身を料理として娘に供していたのだと。 そして今、鏡子もまた、読者という名の食卓に載せられている。

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カクヨム
カクヨム2025/11/03
  • 現在の作品肉の文法―母を食べた娘の、言葉になる七日間―