あらすじ
蒸気と歯車が世界を回す、煤煙の王都アッシュフィールド。
かつて王立科学アカデミーの若き天才と謳われながらも、ある事件をきっかけにその座を追われ、今はしがない私立探偵として糊口をしのぐ男、アーサー・ペンウッド。彼の元に、ある日、王都有数の富豪から一件の依頼が舞い込む。それは、盗まれた歌姫オートマタ『クララ』を探してほしいという、ありふれた捜査のはずだった。
しかし、現場に残されたわずかな痕跡から、アーサーは犯人が単なる窃盗犯ではなく、高度な機械技術に精通した、自分と同じ「世界の裏側」を知る人間であることを見抜く。
時を同じくして、スクープを狙うおてんばな新聞記者リリー・ハートフィールドが、メイドに変装して事件現場に潜入。アーサーの鋭い観察眼に正体を見破られながらも、彼女独自の調査で掴んだ「片腕が義手の男」という情報が、止まっていた事件の歯車を大きく動かすことになる。
なぜ犯人は、高価な宝石や美術品ではなく、一体のオートマタを狙ったのか?
犯人が持つ、アカデミーさえも凌駕する超絶的な機械技術の正体とは?
そして、アーサーが過去に葬り去ったはずの、忌まわしき研究との関係は?
科学的知見と推理を武器とする元天才科学者の探偵と、持ち前の行動力と情報網で真実を追い求める新聞記者。全く異なる二人が、それぞれの思惑を胸に、王都の深い霧に包まれた謎に挑む。
これは、蒸気と煤煙の街で繰り広げられる、本格スチームパンク・ミステリーの幕開け。失われた過去の歯車が、今、再び音を立てて回り始める。