あらすじ
高校二年生の相沢雫にとって、日常は退屈で灰色だ。彼女の唯一の光は、人気アイドルグループLUMINAのメンバー、ユウ。
学校での会話は適当に合わせ、放課後はすべてを推し活アカウント【@lumina_shizuku】での活動に捧げている。ユウからの「いいね」やコメントへの返信は、雫の自己肯定感を満たす、最も大切な「宝物」だった。
そんなある日、文化祭準備でクラスメイトの葵と作業をしていた雫は、ふとしたことからユウの「裏の顔」を目撃してしまう。いつも完璧な笑顔を見せるSNSのアイドル像とはかけ離れた、疲弊し、孤独に耐える一人の少年の姿。
この秘密を知ってしまったことから、雫の日常は崩れ始める。「私がユウくんを救わなければ」という使命感に駆られた雫は、さらに推し活にのめり込み、現実の友人である葵との約束や、文化祭の準備を疎かにするようになっていく。
「二つの世界に生きているみたい」――心配する葵の言葉も耳に入らない。雫は、ユウがSNSに隠したかもしれない「SOS」の暗号を必死に読み解こうとする。
そして、ついにユウを直接待ち伏せし、勇気を出して声をかける雫。しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは、ユウからの**残酷なまでに完璧な「ファンサービス」**だった。
ユウにとって自分は、何千人、何万人といるファンの一人に過ぎなかった――。
依存の先に見た絶望の中で、雫は初めて、自分自身と向き合うことになる。これは、推しという光に囚われた少女が、本当の友情の重みと、自らの力で人生を歩むことの輝きを見つけるまでの、切なくも温かい成長の物語。雫が最後に下す「アカウントの削除」という決断をする。