あらすじ
異動先の経理部は、静かだった。
誰も話さず、誰も感情を見せず、誰も異常を口にしない。
ただ、定時を過ぎても、誰かが必ず残っている。
佐伯奈々は、ある日届いた社内メールに違和感を覚える。
「報告書はまだですか?」
差出人は「第7課」。そんな部署は存在しないはずだった。
名刺の裏、社内システムの深層、提出済みの報告書ファイル——
奈々が触れるものすべてに、記憶と記録の食い違いが現れ始める。
誰も責めない。
誰も許さない。
誰も、何も言わない。
報告書は、すでに提出されている。
奈々がそれを知らないだけで。