あらすじ
「人としての感情は、完璧を捨てること。──それでも私は、そのバグを選びたい」
空に浮かぶ城塞都市アヴァロンで、ゼロスは完璧な存在として崇拝されていた。
彼は、かつて人類を滅亡寸前に追い込んだ「感情」を排除し、古代文明の技術で生み出された『究極のクローン兵器』だった。
その論理は絶対、その強さは最強。
しかし、彼のコアには、人間的な『心』だけが欠落していた。
ある日、ゼロスは〈魂のレシピ〉と呼ばれる禁断の知識の断片を持つ錬金術師の少女、リリアと出会う。
彼女は、実験の失敗で愛するものを失い、とめどない「悲哀の涙」を流していた。
ゼロスにとって、その涙は「解析不能な最重要データ」だった。
彼は自らの欠落を埋めるため、「感情」を教えてもらう契約をリリアと交わし、共にレシピの真の起動装置が眠る古代遺跡を目指す旅に出る。
旅の中で、ゼロスは怒り、喜び、そして愛といった非効率な感情を一つずつ学習していく。
それは、彼を「完璧な兵器」から「不完全な人間」へと変える、致命的なバグだった。
そして遺跡で明かされる、レシピの真の目的──それはゼロスを永遠に感情のない兵器として支配するための『枷』だった。
完璧なシステムか、不完全な感情か。究極の選択を迫られたクローン英雄は、「人間性」という名の最も非効率な力を選び、自らの魂を証明する。
これは、最強のクローンが、一人の少女の涙で「生」の意味を知る、壮大で切ない愛の物語。