あらすじ
私が還暦を迎えたのは今から10年11ケ月前であった。
脊髄疾患になったのは59歳10ケ月の時であった。
私は59歳の9月30日に福山市内の脳神経センター大田記念病院へ入院した。
翌月3日に脊髄硬膜動静脈瘻という厄介な病気で動脈カテーテルによる手術を受けた。手術時間は5時間50分。全身麻酔であった。
脳神経外科医による手術を受けたのだ。
両股の動脈にカテーテルを左右1本ずつ先端に針のついたカテーテルを刺して行う手術である。
カテーテル治療では、硬膜上の病変近くまでカテーテルを到達させ、NBCAという液体の塞栓物質を用いて、硬膜上の病変から硬膜内の逆流静脈までの部位を閉塞させ(かため)るのだ。閉塞ができれば外科手術に比べ、痛みはなく、術後の回復も早い治療法である。しかし、閉塞させる血管から正常な脊髄への栄養動脈が出ている場合にはカテーテル治療はできない。液体塞栓物質が十分に静脈側まで到達しないと治癒せず、外科手術よりも完全治癒率は低い。
私は運が良かった。
障害は残っているが完全治癒したのだから。
私の場合、脊髄硬膜にある動脈の血管と静脈の血管がくっ付くという奇妙な病気になったのだ。しかもその疾患の部位が最悪であった。胸椎の7番という箇所の動脈と静脈の血管がくっ付いたのだ。
そのため、下の感覚が一切なくなった。
排尿も、排便もまったく感じなくなった。
従って尿意も便意もない。
両足は酷い痺れと異常な感覚障害に悩まされることになった。
以来私は重度の身体障害者になったのだ。
私の話しはさておき、
初老の話しである。
国語辞典で調べると「初老」は、本来40歳を指す言葉であると表記がある。
しかし、考えてみると
平均寿命が延びた現代では50歳から60歳前後を初老というのが分かった。
私はこの初老に関する言葉の定義について調べた。
すると、どうだろう。
この初老の意味が手に取るように分かるではないか。
「初老」は、かつては40歳という年齢になった男女をそのように呼んでいた。
しかし時代は変わり、平均寿命も延びた。
人間の40歳はまだまだ、働き盛りと認識されるようになった。
結局、結論として「初老」という年齢は現在では50歳から60歳前後ということになった。そこで私は考えたのだ。
還暦という60歳前後という老いを感じ始める時期としたのだ。
この小説の主人公は佐藤浩一、60歳である。
三年前に連れ合いを亡くし、今は|男寡《おとこやもお》である。
彼は性欲がとても強かった。
しかし、そんな彼のことは誰も知らないのだ。