あらすじ
大学二年の春、文学部の夕(ゆう)は偶然、事故で声を失った後輩——桐生真白(きりゅうましろ)と出会う。
彼女は声を発せず、指先とノートと視線で世界と繋がっていた。
筆談の隙間に流れる呼吸、手の動きの一拍のズレ、
言葉よりも雄弁な“間”が、ふたりのあいだに小さな橋をかけていく。
しかし、真白の沈黙の奥には「喉の傷」だけではない理由があった。
そして夕もまた、過去のトラウマから“人の声を信じられない”でいた。
——声を失った少女と、言葉を怖がる青年。
互いの沈黙を読み合ううちに、
“言葉より確かなもの”に気づいていく。