あらすじ
皇紀二六〇三年の帝都。さる有名な女学校を舞台に繰り広げられる四人の女学生たちの物語。
学院は上流階級の子女が多く集う箱庭のようなところだった。
この春新たに学院に入学した七星は学院の花形である射撃部に所属していた。それは憧れの先輩が主将を務めていたからだ。
しかしそこに男装の麗人「御前様」が転入してくる。「御前様」は瞬く間に生徒たちの憧憬の的となり、主将の王国である射撃部さえも変えていきつつあった。果たして主将と「御前様」が並び立つことは可能なのか? 不安になる七星に「御前様」は怪しく微笑むのだった。
七星は転入前に一度だけ「御前様」を見たことがあったがそのことを口にしようとは思わなかった。七星が見たのは恐らく見てはいけない場面だったからだ。それは「御前様」が誰かを殺害するところだったのだ。
やがて七星は少しずつ「御前様」の真実に近づいていく。最後に七星が出した答えとは……。
七星をはじめ彩羽、凪咲、真波と四人の女学生の思いを描く連作短編集。年頃の女学生が思い描く恐ろしいものとは一体何なのか想像しながらお楽しみください。
ここでこの物語の舞台となる白蘭女学院の神秘学研究会を覗いてみましょう。
「皆さんは何が一番恐ろしいかしら?」
「私はやはりお化けとか妖怪とか目に見える化け物が恐ろしいわ」
「あら、それを言うなら目に見えないものの方が恐ろしいのではないかしら。恐怖の所在が分からないというのはそれだけで恐怖でしょう?」
「私は結局一番恐ろしいのは人ではないかと思うわ。憎しみや後悔といった人の強い思いが呪いになることもあるのだし」
「なるほど、皆さんの話をまとめると化け物で目に見えなくて人であるものが一番恐ろしいということね」
「嫌ですわ部長、そんなものあるはずないわ。もしあればそれ以上に恐ろしいものはないでしょうけれど」
「そういえばそろそろ部会の時間ではなかったかしら?」
「そうね。遅れると副会長に叱られるわ。副会長は恐ろしいもの」
「急ぎましょう、急ぎましょう」
「何だか一番恐ろしいのは副会長みたいね」
「本当ね、ふふふ」
少女たちは慌てて出ていき部室には誰もいなくなりました。年頃の少女たちは騒がしいものですね。でも私が聞いていた話とは少し違っていました。確か神秘学研究会は部員が一人しかいなくて廃部の危機に瀕していると聞いていたのですが……。